問題
Q、目的物に瑕疵があり、損賠請求をしている場合、注文者は損倍額を越える報酬全額の支払を拒絶できるか。
▼答え
1、瑕疵担保責任による損賠請求をする場合、634条2項後段から報酬債権と損賠請求権は同時履行の関係にたつ。
しかしこれが対等額でのみ同時履行の関係に立つのか、全額について立つのかが不明であるため問題となる。
2、同時履行とは債権と債権が対向している場合に公平の観点から認められるものであるが、通常その債権の価値が同一であることは要求されていない。よって原則として報酬債権全額について履行を拒絶でき、損賠なき限り債務不履行責任も負わない。
3、もっとも瑕疵修補請求については、条文上瑕疵が重要でなく、かつ修補に過分な費用を要するときは、その行使が認められていない。とすればその点と均衡をとるために、①瑕疵の内容が重要でなく、かつ②修補に要する費用が修補によって生じる利益と比較して過分と見られるような場合などには、他の事情も考慮したうえで、損賠債権をもって報酬残債権全額との同時履行を主張することが信義則に反するとして否定されるべきである。
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