刑法207問目(予備)
以下の事例と会話につき、下の記述は正しいといえるか。
【事例】
甲は、Vが宅地造成地に駐車して所有・占有していたパワーショベルを盗もうと思い、重機販売業者の乙に前記パワーショベルを同所から搬出させた。
【会話】
(教授X).【事例】において、甲が、事情を全く知らない乙に対し、前記パワーショベルは甲の所有・占有である旨説明して売却し、乙に前記パワーショベルを搬出させたという事実関係があるとしましょう。甲の罪責はどうなりますか。
(学生Y).パワーショベルを搬出したのは乙ですが、乙は、事情を全く知らず、規範的障害のないままパワーショベルを搬出したので、乙には窃盗罪の①(ア.故意・イ.法益侵害)がないと思います。甲は、乙を道具のように利用してVのパワーショベルを盗んだので、窃盗罪の間接正犯が成立すると思います。
(教授X).甲には、いつの時点で窃盗罪の実行の着手が認められるのですか。
(学生Y).私は、実行の着手は法益侵害の具体的危険が発生した時に認められると考えた上で、間接正犯の場合には、被利用者の行為開始時に実行の着手が認められると考えます。したがって、②(ウ.乙が甲との間でパワーショベルを購入する契約を締結した時に・エ.乙がパワーショベルを搬出する作業を開始した時に)、甲には実行の着手が認められると思います。
(教授X).では、【事例】において、甲が、パワーショベルを盗むため、事情を知らない乙に先ほどと同様の説明をして売却したが、その後、乙が、宅地造成地に向かう途中で甲の計画にたまたま気付き、自分のものにするつもりでパワーショベルを盗むことを自ら決意して搬出したという事実関係があるとしましょう。先ほどの場合と何か違ってきますか。
(学生Y).乙は、盗むことを自ら決意してパワーショベルを搬出したのですから、乙には窃盗罪の③(オ.正犯・カ.幇助犯)が成立します。そして、乙には、パワーショベルを搬出する前に甲の計画を知って規範的障害が認められるので、もはや甲の道具とはいえません。したがって、乙が搬出した行為を甲の実行行為と評価することはできません。
(教授X).その場合の甲の罪責はどうなりますか。学生Y.甲は、間接正犯を犯す意思で、客観的には乙に窃盗を決意させたので、甲には、窃盗既遂罪の④(キ.幇助犯・ク.教唆犯)が成立すると思います。
(教授X).これはY君の考え方とは異なるのですが、間接正犯の実行の着手時期につき、利用者が被利用者を道具として利用した時点とする考え方に立った場合、結論はどのように変わりますか。
(学生Y).甲には、窃盗既遂罪の④(キ.幇助犯・ク.教唆犯)のほかに、⑤(ケ.窃盗未遂罪・コ.窃盗既遂罪)の間接正犯が成立すると思います。
③にはオが入る。
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