平成29年(刑法)

予備試験【短答】過去問|刑法平成29年第5問|解説番号421

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刑法421問目(予備)

問題

次の事例に関し、判例の立場から下の記述が正しいといえるか。

【事例】
土木作業員甲及び乙は、現場監督者丙の監督の下で、X川に架かる鉄橋の橋脚を特殊なA鋼材を用いて補強する工事に従事していたが、作業に手間取り、工期が迫ってきたことから、甲及び乙の2人で相談した上で、より短期間で作業を終えることができる強度の弱いB鋼材を用いた補強工事を共同して行った。その結果、工期内に工事を終えることはできたものの、その後発生した豪雨の際、A鋼材ではなくB鋼材を用いたことによる強度不足のために前記橋脚が崩落し、たまたま前記鉄橋上を走行していたV1運転のトラックがX川に転落し、V1が死亡した。なお、甲及び乙は同等の立場にあり、甲及び乙のいずれについても、B鋼材を工事に用いた場合に強度不足のために前記橋脚が崩落することを予見していなかったものの、その予見可能性があったものとする。


甲及び乙には、強度の弱いB鋼材で補強工事を行うことの意思連絡はあるが、不注意の共同はあり得ないから、甲及び乙に業務上過失致死罪の共同正犯が成立する余地はない。

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解答

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解説

各人が共同の注意義務に、共同して違反した場合、過失犯の共同正犯が成立すると考えられています。本件では、両者とも「強度不足による崩落」について、予見可能であったにも関わらず、予見しなかったという事情があります。しかも互いに同一の雇用主の元で、同僚として働いていたのですから、当該注意義務を共同して負っていたといえます。以上から、本件では業務上過失致死罪の共同正犯が成立する余地があります。

参照

▼ 参考条文・判例

東京地判平成4年1月23日

▼ 魔法の言葉

名言


嘘には足がない。だがスキャンダルは翼を持っている。


~トーマス・フラー~

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