刑訴234問目(予備)
次の学生AないしDの【会話】は、脅迫事件の被害者が脅迫を受けている現場の音声を録音した録音テープを、犯行時の状況を立証するために用いる場合の証拠能力について議論するものである。証拠とすることの同意(刑事訴訟法第326条)がない限り、同法第321条第3項の要件を満たさなければならないとする見解からの発言をする学生はAの1人だけであるといえる。
【会話】
学生A.この場合の録音テープは、犯罪が行われた現場の状況を録音したもので、現場の状況を音声の面から、つまり聴覚の面から明らかにするというものですよね。
学生B.その意味では、聴覚と視覚という違いはあるけれど、証拠能力については、現場の状況を視覚の面から明らかにする現場写真と同じように考えていいんじゃないかな。僕は、写真は機械的方法によって現場の状況をそのまま記録するもので、そこに供述の要素は含まれないし、録音でも音声を記録する上での機械的正確さは保障されていると思うね。
学生C.私は、録音の過程で、録音機器を操作したり、記録された情報を編集したりするというような作為が介在する点を重視すべきだと思います。
学生D.録音の過程での人の作為による誤りと、人の知覚・記憶・表現に伴う誤りとは、本質的に違うものですよ。
学生A.私は、現場写真にせよ、現場録音の録音テープにせよ、現場の状況を報告するために人の手によって作成されるものであるという性質を持つことを考えるべきだと思います。そうすると、録音テープの作成者が、公判廷で録音テープが真正に作成されたものであることを供述することが、録音テープの証拠能力を認める要件として必要になります。
学生B.録音テープの作成過程について、現場の状況が正確に録音されているかどうかなどを確認するには、録音をした者の証人尋問をするのが一番有効だろうね。でも、僕の立場からすると、証拠能力の要件は関連性で足りるので、録音者の証人尋問が絶対に必要とまではならないな。
学生C.私は、録音機器の操作や録音後の編集などによる誤りの危険性があるから、録音者に対する反対尋問による確認がなされることが、必要不可欠だと考えます。
学生D.それじゃあ、現場の状況が録音されているのが明らかなのに、録音者が誰か分からないときには、問題なんじゃないですか。そもそもCさんが言っているのは、証拠能力の問題なのかな。
詳細は▼をタップ